持続可能なモビリティのための
AI研究プロジェクトがスタート

2022年3月17日

WirelessCarは、機械学習学のSlawomir Nowaczyk教授を代表とする、スウェーデンのハルムスタード大学のCAISR(Center for Applied Intelligent Systems Research)と共に、AIを活用してコネクテッドカーを持続可能なモビリティへと転換するための、2年間の研究開発プロジェクト「FREEDOM」の契約を結びました。このプロジェクトはスウェーデンのイノベーション庁Vinnovaからの「Fordonsstrategisk forskning och innovation, Effektiva och uppkopplade transportsystem. 」という呼びかけに応じたもので、一部資金を同庁から得ています。WirelessCarはこのコラボレーションを通じて新しいインサイトを見つけ、自動車会社向けの持続可能なモビリティサービスの形成に役立つデジタルサービスを生み出したいと願っています。

データ駆動型アプローチで、モビリティパターンを可視化し、新しいインサイトを得ることができる

車両と人の移動パターンを認識することで、エンドユーザーの行動変化を促す新サービスを生み出せます。このようなデータは、たとえば移動に最適なルートや時間帯を選択したり、カーシェアの機会を見つけたり、あるいは最も効果的な自動車のエンジンを選択する際など、エンドユーザーがより良い情報に基づいた意思決定を行うことを可能にします。こうしたインサイトはすべて、過去の運転パターンを分析し、類似した状況での別のドライバーの運転パターンと比較することから得られます。

データ駆動型アプローチを重視することで、モビリティの共通パターンを特定し、システム全体の効率に影響を与える重要な要素を定量化することが私たちの目標です。これは、自動車業界が持続可能であり続けることをサポートするための、新しいデータ駆動型サービスを創出・提供する絶好のチャンスだと捉えています。

なぜこれが重要なのか?

乗用車は、世界中の輸送関連セクターから排出されるCO2量の41%近くを占めており 今日の都市が直面する最も重大な課題の1つとなっています。しかしこれは、またとないチャンスでもあります。世界中の都市がこうした機会を認識し始め、現在の化石燃料依存から、効率と再生可能エネルギーを重視した未来への移行を急いでいるのです。

私たちは地球を守り、人々の生活を向上させるソリューションへの転換を目の当たりにしています。しかし、それは容易なことではありません。都市とその交通システムは複雑になりすぎていて、ほとんどの人は自分が置かれている状況において何ができ、何をすべきかについての知識が不足しています。革新的な交通ソリューションには、意思決定者へ正確なインサイトをインプットすることが必要であり、FREEDOMプロジェクトはそうしたデータに基づくインサイトをより利用しやすくすることを目的としています。

what we do illustrative car

このプロジェクトのパートナーであるハルムスタード大学の機械学習学教授、Slawomir Nowaczyk氏はこう語っています。「車両データを正しく利用することは大きな可能性を秘めており、これを探ることが私たちが目的とするものです。すべての人に必要なモビリティを提供するというミッションを進める一方で、公害とCO2排出を増加させないようにしたいのです。FREEDOMプロジェクトで何百万台ものコネクテッドカーのデータを分析すれば、さまざまな関係者がそのデータから利益を得られるようになるでしょう。」

コネクテッドカーデータの重要な2つの軸

コネクテッドカーのデータはまだ、驚くほど活用されておらず、このデータに基づく機械学習は前述のモビリティ構想の多くを持続可能にするために不可欠なツールです。機械学習のアルゴリズムは、持続可能で効率的なリソース活用につながり、サービスの開発と同時に、利便性とコストの面でも役立ちます。

モビリティデータとコネクティビティデータは2つの重要な軸を特徴としています。

  • 空間 場所やルート(どの通りに車両が駐車しているかなどの情報)
  • 時間 時点や期間(いつ停車したか、あるいは移動している時間などの情報.)

再び、Slawomir Nowaczyk教授の言葉です。「グラフニューラルネットワーク(GNN)は、ディープニューラルネットワークとグラフ理論が交差する、機械学習で新たに出現した将来有望な分野で、この2つの側面を扱うのに適しています。FREEDOMプロジェクトは、最先端の科学的ソリューションを社会の重要課題に適用するまたとない機会を与えてくれます。」

コネクテッドカーデータを利用する範囲を広げることで道が拓ける

持続可能なモビリティの実現に大きく貢献するには、①技術開発、②ユーザーの動機、ニーズ、主な原動力の調査、③商業面、社会面、環境面といったさまざまなステークホルダーへの価値創出、の3つが相互作用を引き起こす必要があります。

そのためには、技術開発と社会的状況の相互関係に注目し、ユーザーの実際のニーズ、悩み、希望に技術で対処し、その結果、ユーザーの行動を変えさせ、活動意欲を引き起こす必要があります。それはは、気候変動に配慮したシナリオを実現し、同時にOEMにビジネス価値をもたらす活動です。

このプロジェクトの重要な成果は、ユーザーのモビリティの好み、電気自動車への移行に関する希望や不安、運転スタイルや毎日の習慣の変更についてのインタビューと観察調査です。持続可能性はモノの特性ではないからです。モノは単独では持続可能にはなりえません。持続可能性はむしろ完全なシステムから生み出される新しい特徴です。重要なのは個々のパーツではなく、パーツがいかに連携して全体として効果的な成果をもたらすかが重要なのです。

研究と実践は通常、技術主導かユーザー研究と設計によって特徴づけられます。FREEDOMプロジェクトは、このような定量的研究と定性的研究の独自の組み合わせにより、持続可能なモビリティへの貢献を着実に行うための基礎となります。

このプロジェクトについて詳しく知りたい場合、または参加したい場合は、Natalie Luccaまでお問い合わせください。当社の活動については、当社のウェブサイトにアクセスしていただくか、WirelessCarブログで他の記事をお読みください。

Natalie Lucca
製品オーナー分析&AI