OEMはコネクテッドカー向け
コールセンターサービスの
課題をいかに克服できるか?

2023年2月23日

自動車業界では、コネクテッドカー向けコールセンターサービスの断片化が進んでいます。どのようなコールセンターサービスを提供すべきなのでしょうか?どうすれば、コネクテッドカーを適切な市場の適切なサービスプロバイダーにつなぎ、複数の市場と多様な車種にわたって複数の言語で便利かつ信頼できるサービスを提供できるようになるでしょうか?顧客サポートには音声による会話が必要でしょうか?OEMは現在、膨大な時間とリソースをコールセンターサービスに費やしていますが、投資利益(ROI)は必ずしも保証されていません。こうした状況で、OEMはどうすればコネクテッドカー向けコールセンターサービスの課題を克服できるしょうか?また、良い面に目を向けると、これらのデジタルサービスは、自動車ブランドの強化や競合他社との差別化にどのように役立つでしょうか?

コネクテッドカー向けコールセンターサービスの定義

自動車業界におけるコールセンターサービス(CCS)は、「乗員が何らかのサポートを必要としている各種状況で提供されるデジタルサービス」と定義できます。これには、盗難車の通報から、EV充電ステーションや職人気質のパン屋さんを探すことまで、すべてが含まれているのです。最近では、OEMは最終顧客とのつながりを強化するためにこうしたサービスが重要だとしています。こうしたサービスは台頭しつつあるD2C(Direct to Customer)トランスフォーメーションで重要なチャネルとして使用され、このトランスフォーメーションは電気自動車と関連づけられることが多くなってきました。OEMは、中間業者を省くことで、コミュニケーションの強化とブランド価値の向上に成功しているのです。

目的が異なれば、コールセンターサービスの運営方法も変わってきます。以下にいくつか例をあげます。

  • 緊急時には、ドライバーが手動で、または車両が自動で、訓練を受けた専用のコールセンターに通報することができます。車両データに基づき、適切な緊急サービス(と適切な人数)が現場に即座に送られるため、この情報がない場合の標準的な手順によって生じる恐れのある致命的な遅れを削減できます。このような場合は、地域による違いを考慮し、コールセンターの担当者は、ドライバーの言語を話すことができ、適切な緊急サービスの対応や送迎車の手配、車の乗員を救急車で適切な病院に搬送することなどができるようになっています。
  • 車両アラートやシステム障害は、コールセンターにただちに通報されます。ドライバーが故障通知(bCall)を行うと、コールセンターの担当者は車両の位置、車両状況以外にも幅広い情報を入手でき、効果的なオプションで顧客を支援できます。担当者はいくつか簡単な質問をするだけで、ドライバーを安心させ、ロードサイドアシスタンスや送迎車を派遣することができます。あるいは、最近よく目にするようになりましたが、車からのデジタル入力を使用することで会話せずに、適切な応答をドライバーに自動で提供することもできます。
  • ドライバーが情報コール(iCall)をコールセンターにかけ、最寄りのレストランの場所など、欲しい情報をリクエストします。コールセンターの担当者は車両の位置と契約者の情報を確認し、それに応じた回答をすることができます。
aerial top view of cars driving on the road

断片化されたコールセンターパートナーの課題

では、こうしたコネクテッドカー向けコールセンターサービスの提供における主な課題は何でしょうか?

ひとつは、コールセンターパートナーがそれぞれ散在していることです。コールセンターは広大な地域(欧州など)をカバーして運用できますが、ロードサイドアシスタンスなどのサービスは国内のプロバイダーに依存しているのが現状です。同様に、ある自動車ブランドは、特定の市場では自社で運営する全国規模の販売会社を持っていますが、他の市場では独立系の代理店に依存しています。車とテクノロジーの開発はOEMが行っていても、ロードサービス契約はさまざまな国で独立系代理店が結んでいるのです。

また、データの問題もあります。リアルタイムの車両データを「動的データ」と考えるなら、OEMや代理店のデータは「静的データ」です。工場、コネクテッドカー加入者プラットフォーム、販売システム、CRM環境からのデータが含まれており、コールセンター担当者が自信を持って応答するには、このすべてのデータが背景情報として担当者に提供される必要があります。

コネクテッドカー向けコールセンターサービスは、すべての対象市場で、さまざまな車種に対応しなければならず、多くの場合、車のサービス開始日から5年以上にわたって運用する必要があります。ここで重要となるのが、長期的な研究開発、運用、メンテナンス、継続的改善などの業務に、OEMがどれだけの時間とリソースを投入する意思があるかということです。また、この取り組みによってどれだけの投資対効果が得られるか、ということも重要になります。

ブランド別のコネクテッドカー向けコールセンターサービスはコストに見合うか?

ROIの問題は、コールセンターサービスの複数の側面に関わっています。たとえば、CCSは今も、自動車ブランド間の独自のセールスポイントや高度に差別化された機能というよりは、心理的な要素が強いものです。

これは市場参入コストに関わることです。故障通知(bCall)機能を例に取ってみましょう。これは必要な機能であり、(特にプレミアムブランドでは)すでに期待されていて、今後ますます一般的になっていくでしょう。コネクテッドカー向けのすべてのデジタルサービスと同様に、コールセンターサービスは、規制、テクノロジー、そして顧客のニーズに対応するために、継続的な進化と改善が必要です。

しかし、よく似たコールセンターサービスをブランド固有のものとして差別化することは、OEMに利益をもたらすでしょうか?そして、こうしたサービスから得られるROIは、それに費やす努力や投資に見合うものでしょうか?見合わないのであれば、他にどのような選択肢があるでしょうか?

a smiling woman driving a car

コールセンターサービスは既製のデジタル製品

重要なのは、OEMが現在のビジネス目標を満たすには、独自のカスタムCCSソリューションを開発するのと、コールセンターサービスを既製のデジタル製品で提供するのと、どちらが有効か?と問いかけることです。

コールセンターサービスは、コネクテッドカーサービスの開発会社やプロバイダーから購入できるデジタル製品の良い例です。OEMは、CCSサービスを購入することで、自社ブランドを明確に差別化する製品やソリューション開発にリソースを集中することができます。

OEMは、開発会社/プロバイダーと共に、こうしたコールセンターサービスを構成することで、ブランドを強化し、顧客体験をさらに向上させることができます。実際、コールセンターサービスの開発、維持、提供においては、開発会社/プロバイダーが「力仕事」を行うことができます。WirelessCarは、コールセンターパートナーからのインプット、新型の車載センサー、自動化の機会、OEMのビジネスケース、そして規制圧力から得られたインサイトに基づいて調整や優先順位づけをした、常に進化し続けるロードマップを用意しています。

コネクテッドカー向けコールセンターサービスとWirelessCarの連携

適切なデータを適切なパートナーやサービスプロバイダーに提供し、断片化されたCCS環境を管理し、機能から規制要件までのすべてを継続的に改善すること。

コールセンターサービスが成功するかどうかはこうした要素で決まりますが、多くの時間とお金を費やすことを正当化するのは、どのOEM組織でも困難です。しかし、WirelessCarでは、これらの課題に20年以上にわたって取り組んできました。当社は現在、1,000万台を超えるコネクテッドカーにデジタルサービスを提供しており、当社のコールセンタークライアントは22の言語で利用できます。

WirelessCarは、幅広いコールセンターサービスを通じて、コネクテッドカーのデータをリアルタイムでコールセンターに転送します。これらのデータはOEMの希望に応じて、当社のコールセンタークライアント(CCC)またはAPI経由で利用できます。

したがって、OEMは自社に最も適したオプションを選択でき、ビジネスに変更が生じた場合はそれを自由に変更できます。OEMは、(自社のコールセンタークライアントでWirelessCar APIを使用するように要求した)社外のコールセンターサービスを利用すると決定しても、数年後に(専用のコールセンタークライアントを必要とする)自社のソリューションに移行するかもしれません。こうしたセットアップは、地域、さらには国によって異なり、これを当社では25年にわたり行ってきました。WirelessCarは、時間とお金を節約する既成製品と、真にグローバルな展開により、柔軟性に対するニーズに応えます。

city view with abstract connection network lines

これからのコールセンターサービスに期待することは何でしょうか?

コネクテッドカーに関しては、多くのコールセンターサービスでは実際の音声通話は必要ありません。案件を引き受けたコールセンターの担当者は、車またはアプリからのデジタル入力を受信し、状況などの不可欠な情報を取得し、適切な応答を迅速に、自信を持ってドライバーに返すことができます。重要なことは、この情報(車両と顧客のデータ)がクラウド化されると、大きなチャンスが生まれるということです。

機械学習が進歩するにつれ、車載センサーのデータ、カメラ画像、顧客の好みや行動に関する保存済みの情報、過去のリクエストなど、特定のタイプの問い合わせに対して自動応答を提供する新しいツールを私たちはすでに目にしています。この自動化技術は、コールを適切につなぐことから、顧客のニーズへの対応まで、あらゆることを可能にします。

それでも、状況が複雑であれば、ドライバーとコールセンター担当者との間で音声または動画でのコミュニケーションが必要になる場合もあります。なぜなら、機械学習ではこうした状況すべてはまだ確実に処理できず、今後しばらくはできないと考えられるからです。コールセンターサービスはその性質上、複雑であり、コールセンターサービスを必要とする状況やリクエストの多くも同じく複雑です。コールセンターサービスは人間が対応します。OEMはコールセンターサービスを常に迅速かつ確実に提供できなければなりません。また、前述のとおり、市場の期待、テクノロジー、そしてますます厳しくなる国内外のサイバーセキュリティ法制に対応するために、継続的に進化していかなければなりません。自律運転ソリューションのような迅速かつ自信のある応答が不可欠な事例も出てきます。コールセンターサービスは、引き継ぎの遅れやシステム障害によってSAEレベル3+のシステムをサポートする最有力候補です。運転する人が誰もいない場合、乗員や車自体はどうすればいいのでしょうか?

最後になりましたが重要なことを。コールセンターサービスは、故障通知(bCall)、緊急時通報(eCall)、盗難車の追跡など、リスクや被害を軽減するだけのものではありません。他にもさまざまなサービスがあります。コネクテッドカーは私たちの「つながる日常生活」において欠かせない存在となるにつれ、今後コールセンターサービスの利用が増え、感激するような新しい利用方法も生まれてくるでしょう。すると、ロイヤルカスタマーはそのブランドが自分たちにとってなぜ大事なのかを実感し、ターゲット客はもっと早く買えばよかったと後悔することでしょう。

私が特に面白いと感じた例の1つが、場所やエリアをまったく新しい方法で発見できるようにする地域密着型サービスのアイディアです。コールセンターサービスの中には、特定の都市でのみ利用可能にできるものもあります。たとえば、ドライバーをある都市だけで利用できるオンデマンドのEV充電サービスや洗車サービスにリンクすることができます。すべてのサービスプロバイダーが全国や地域レベルで運用を行っているわけではなく、多くの主要都市は独自の豊かなエコシステムを形成していて、その国の中では異質な文化を持った存在です。そのためOEMは、さらに優れた走行・運転体験をドライバーに提供する機会を得られます。これはコールセンターサービスという広大な分野の1つの領域でしかありませんが、これを追及していく人々にとっては大きな可能性を秘めた領域です。

当社がどのようにコネクテッドカー向けコールセンターサービスを開発・管理しているか、当社の自動車業界のお客様について詳しく知りたい場合は、お気軽にお問い合わせくださいコールセンターサービス自動車サイバーセキュリティその他の関連記事も是非お読みください。当社のウェブサイトでは、WirelessCarのコールセンターサービスや、当社のその他の製品ソリューションをより詳しくご確認いただけます。